今年の天皇賞・春に出走するテーオーロイヤルは、ウチの厩舎にいたリオンディーズの子供にあたります。現役時代は早くから完成度が高く、デビュー2戦目で朝日杯FSを勝ってくれました。兄のエピファネイアに比べると小さくて、性格にはピリッとしたところがありましたが、普段は手がかからない子でした。

以前にも書きましたが、シーザリオの子は競馬で調教をはるかに上回る走りを見せてくれます。だからハードに攻めすぎず、いつも八分ぐらいで出走する感じでした。まじめで頭がいい血統だけにレースになると「頑張らないと」と思いすぎるところがあり、この子も折り合いは課題でした。結局はダービー(5着)を最後に引退となってしまいましたが、古馬になって心身が安定すれば中長距離でも結果が出せたかもしれませんし、今となっては「もう少し丁寧につくっていれば…」とも思います。

私自身は長距離戦が好きで、それが馬づくりにも出ていたと思います。種牡馬入りを目指すには、まずクラシックを狙うことになりますし、血統や適性よりも長いレースに使うことも多かったでしょう。こうしてリオンディーズの子供が長距離で活躍してくれるのはうれしいものです。もちろん楽しみにしています。

少し話は変わりますが、私が最後まで勝つことのできなかった天皇賞・春で、最高着順はトーセンカンビーナの5着(20年)でした。その時に乗ってもらったのが藤岡康太君です。兄の佑介君とともによく厩舎へ来てくれて、調教も手伝ってもらいましたし、ディアデラマドレでは重賞を3つも勝ってくれました。人柄が良くて、顔を見るだけで明るくしてくれるような雰囲気を持っていました。

彼が亡くなってしまったのは本当に残念でなりません。けががつきものの世界ではありますが…。先日、私もお葬式に参列させていただきました。お父さんの健一調教師のごあいさつにもありましたが、彼が大好きだった競馬をこれからも守っていかなければいけません。今回の件で「どれだけ頑張っても事故は起きてしまう」ということを肝に銘じたホースマンは多いと思います。そういう意味でも、競馬界において藤岡康太という名前は永遠に消えることがないでしょう。

今週も、すべての人馬が無事にレースを終えることを願っています。

■震災から4カ月 人馬の飲料水をようやく自前で

角居氏が営む珠洲ホースパークでは、震災から4カ月近くでようやく人馬の飲料水を自前で供給できるようになった。以前は車で片道10~15分ほどかけて1日500リットルもの水を運んでいたが、井戸水をろ過する浄水器がレンタルされた。ただ、水道は依然として復旧しておらず、角居氏は「道路から建物の入り口までは復旧したんですが、建物の中の水道管が折れているので、まだ半年以上はかかりそうです」と説明した。

こうした現状を取材したドキュメンタリー番組「ショートストーリーズ」がNHK総合テレビで29日(月)午前10時5分から放送される。