ヴィクトリアマイルは経験値がものを言う。水島晴之「G1の鍵 その一瞬」は、阪神牝馬S3着モリアーナ(牝4、武藤)に注目した。昨年のNHKマイルC6着以降は2000メートル以上の中距離戦、牡馬との混合重賞に挑戦するなど、あらゆる経験の中で、課題の折り合いを克服してきた。理想の東京マイルに替わり真価を発揮する。

阪神牝馬Sで3着に入ったモリアーナ(右=6番)。左は勝ったマスクトディーヴァ
阪神牝馬Sで3着に入ったモリアーナ(右=6番)。左は勝ったマスクトディーヴァ

モリアーナは1年かけて課題に取り組んできた。今その成果が試される。デビュー2連勝を飾り、阪神JF(12着)でもリバティアイランドに次いで2番人気に支持されたほどポテンシャルは高い。ただ、この頃から操縦性の難しさが顔をのぞかせ、思うような結果が得られなくなった。

この点をクリアしなければ、大きいところで勝負はできない。陣営はベテラン横山典騎手に依頼し、昨年5月のNHKマイルCから我慢させることに主眼を置く競馬をさせてきた。しかも短距離にシフトするのではなく、流れが緩くなる2000メートル以上の中距離戦を選択したところに大きな意味がある。

紫苑Sでは最後方に近い位置から馬群を割って差し切り。秋華賞は後方から内ラチ沿いを鋭く伸びた。年明け初戦は牡馬相手のAJCC(芝2200メートル)に出走し、不良馬場をものともせず大外からチャックネイトの0秒2差。いずれも折り合いはスムーズで、これまで教えてきたことが実を結んだ。

前走の阪神牝馬Sは久しぶりのマイル戦。前半600メートル35秒4のスローペースになったが、以前のように力むことなく、落ち着いてレースを進めた。さすがに先行有利の流れで届かなかったが、上がりは最速32秒9をマーク。しっかり脚がたまっていたから、これだけの脚が使える。ヴィクトリアマイルに向けては、いい予行演習になった。

中距離を使ってきたことで力の配分を覚え、折り合い、瞬発力にいい効果をもたらしている。力みが取れた今なら流れに応じてある程度のポジションで競馬を進めることも可能。大人になったモリアーナなら、ナミュール、マスクトディーヴァとの瞬発力勝負でも引けは取らない。

【ここが鍵】経験を積んで状態ピークへ

牝馬は牡馬に比べて消長が激しく、体調管理が難しいと言われる。「格より調子」という格言が生まれたのも、そういった理由からだ。3歳時の実績を取るか、古馬になってからの成長度を買うか。このあたりの見極めが、馬券的中のポイントとなる。

今年は20年アーモンドアイのような傑出した馬がおらず、伏兵の出番もありそうだ。18年に8番人気で制したジュールポレールはエリザベス女王杯16着→阪神牝馬S5着からの戴冠。実績や着順ではない。あらゆる経験を積んだ上で、ここへピークの状態に持ってこられたか、が鍵になる。

■スタニングローズ 逃げが生きる

スタニングローズは大阪杯で逃げたことが、今回につながる。1600メートルは昨年ヴィクトリアマイル以来。速い流れでは戸惑う心配もあるが、スタートから積極的に出していった分、ポジションは取りやすい。22年秋華賞馬で実績、実力は十分。あとは距離適性だけだが、広い東京なら克服できる。

スタニングローズ(2024年3月27日撮影)
スタニングローズ(2024年3月27日撮影)

■フィアスプライド 昨秋に本格化

フィアスプライドは6歳馬だが、長期休養があり本格化したのは昨年の秋。府中牝馬Sでは4着ながら上がり最速32秒6で、後のエリザベス女王杯2着、大阪杯3着馬ルージュエヴァイユと首+首差の接戦を演じた。中山牝馬Sは掛かって失速したが、牝馬限定ならG1でも力負けはしない。距離短縮もプラスに出る。

フィアスプライド(2024年2月28日撮影)
フィアスプライド(2024年2月28日撮影)