<NHKマイルC>◇5日=東京◇G1◇芝1600メートル◇3歳◇出走18頭

皐月賞3着に敗れたジャンタルマンタル(左)。中央は勝ったジャスティンミラノ
皐月賞3着に敗れたジャンタルマンタル(左)。中央は勝ったジャスティンミラノ

ジャンタルマンタルにとって前走の皐月賞は、将来を分けるレースになったのかもしれません。速いペースの中を好位から早めに抜け出して3着。当時は「脚があがったのはペースなのか距離なのか、見極めは難しい」と記しました。陣営が次走に選択したのは中2週のNHKマイルC。高野厩舎としては皐月賞の敗因を距離に求め、あらためてマイル戦に矛先を向けたのでしょう。起用の妙、陣営の決断の勝利でした。

マイルならやはり強い、という競馬でした。外枠もありましたが、川田騎手は前に壁を置かず、好位馬群の外々を回って直線も抜け出しました。絶対に不利を受けない乗り方ですし、それを選択したのはジャンタルの能力を信じていたからこそ。完璧でした。

NHKマイルCを制したジャンタルマンタルと川田騎手(右端)(撮影・野上伸悟)
NHKマイルCを制したジャンタルマンタルと川田騎手(右端)(撮影・野上伸悟)

対照的だったのは2着アスコリピチェーノです。道中はジャンタルの内に並ぶようにして好位を追走。ペースは平均でしたし、馬の力量を考えても2頭とも最善の位置取りでした。ですが、直線に向いた時、前に馬がいないジャンタルとは対照的に、アスコリはマスクオールウィンが壁になり、ルメール騎手は一瞬迷って前の馬と同じタイミングで内へ動きました。前が狭くなり、ガクンとつまずくようなシーンもあって、いったん追う動作を中断。異常がないと確認してから追い出しましたが、普通は大敗も覚悟する競馬でした。

しかし、馬はもう1度脚を使い、最後は2着。牝馬とは思えない、すごい根性でした。もうワンテンポ待って追い出してもよかったかと思いますが、ルメール騎手にはジャンタルが先に抜け出すのも当然、見えていたでしょう。進路が2強の明暗を分けました。

ひと昔前は、牡馬なら皐月賞からダービー、牝馬なら桜花賞からオークスが当然のローテでした。ですが今は、芝もダートも距離体系が確立され、距離別にいろんなG1があり、海外遠征も選択肢の1つとなりました。ケンタッキーダービーに挑戦して強い競馬を見せる馬がいれば、マイルに距離を戻して勝利をつかむ馬もいます。競馬の楽しさ、ドラマを再確認した1日でした。(JRA元調教師)

NHKマイルCを制し、ジャンタルマンタルをねぎらう川田騎手(撮影・野上伸悟)
NHKマイルCを制し、ジャンタルマンタルをねぎらう川田騎手(撮影・野上伸悟)