間違いなく大きな勝利だろう。雨が降り続く中での試合。「最後まで何が起きるか分からんような展開」。指揮官・岡田彰布をしてそう振り返ったゲームは、しかし、先制点と決勝点がいずれも「ノイジーの押し出し四球」というところが阪神の強みを象徴する。

9回、勝ち越しとなる押し出し四球を選んだ瞬間、ノイジーが何ごとかほえた。助っ人もこの雨の中、勝負に集中していたことを示す光景だ。当然だが、チーム全員が団結して立ち向かった結果の勝利だろう。

開幕から湿りがちな阪神打線だが、“得意技”は繰り出している。四球攻撃である。ノイジーの2つの押し出し四球を含め、この試合、阪神打線はDeNA投手陣から9四球を選んだ。これで今季、阪神打線の四球は「83」に。もちろんリーグ・トップだ。

「打てなければ選んだらエエんや。四球は安打と同じやんか」。年俸に関わる四球の査定を安打レベルにするなど、指揮官・岡田彰布の思想が的中して、四球攻撃を繰り返した昨季。他球団を圧倒する494四球を選んだ。

今季ここまで23試合で83四球は、1試合平均にすれば3・6個。これは昨季を上回るペースだ。開幕から苦しみながら首位に立っている阪神だが、この部分では強みを発揮していると言えるだろう。プロとしてボールを見極めるのは当然かもしれないが、これだけ雨が降り続く中で集中を切らせないのは称賛もの。こういう戦いができれば、今季も十分、期待できる。

「下はだいぶ悪かったみたいやで」。岡田が振り返ったように雨でマウンドの状態も良くなかったと思われる。その中で阪神投手陣がDeNA打線に与えた四球は5。本拠地に慣れている相手を上回ったのもさすがだった。

繰り返すが大きな勝利である。ぬれながら力投していた伊藤将司を早めに交代させる可能性もあったかもしれないが、なんと言っても6回まで“ノーノー”。球数もその時点でわずか67球だ。これでは代えられない。それが7回に初安打を許したことをキッカケに一気に逆転された。

正直、負けていても仕方のなかった試合かもしれない。それを取れたのだ。結果的にこの試合では、ブルペンは桐敷拓馬、ゲラの2枚を使うだけですみ、伊藤将の力投も報われる形になった。1勝1分けはベストに近い結果と思う。(敬称略)【高原寿夫】(ニッカンスポーツ・コム/野球コラム「虎だ虎だ虎になれ!」)

DeNA対阪神 逆転勝ちした阪神岡田監督(中央)はナインをタッチで出迎える(撮影・山崎安昭)
DeNA対阪神 逆転勝ちした阪神岡田監督(中央)はナインをタッチで出迎える(撮影・山崎安昭)
DeNA対阪神 DeNAに勝利しガッツポーズを見せるゲラ(撮影・加藤哉)
DeNA対阪神 DeNAに勝利しガッツポーズを見せるゲラ(撮影・加藤哉)
DeNA対阪神 DeNAに勝利しベンチ前でタッチする阪神ナイン(撮影・加藤哉)
DeNA対阪神 DeNAに勝利しベンチ前でタッチする阪神ナイン(撮影・加藤哉)
DeNA対阪神 1回裏DeNA無死、度会を投ゴロに仕留める伊藤将(撮影・河田真司)
DeNA対阪神 1回裏DeNA無死、度会を投ゴロに仕留める伊藤将(撮影・河田真司)