【井上尚弥の言葉】前夜ネリ倒で4団体防衛も「切り取りやめて笑」プロ初ダウン拡散に

プロボクシング4団体統一スーパーバンタム級王者の井上尚弥(31=大橋)が7日、防衛から一夜明け、横浜市内の所属ジムで会見しました。前日6日夜、ボクシングでは34年ぶりとなる東京ドーム興行で、日本人初のメインイベンターを全う。WBC世界同級1位ルイス・ネリ(29=メキシコ)を迎え撃って6回1分22秒、TKO勝利を収め「歴史的」と納得しました。

1回に左フックでキャリア初ダウンを喫して世界を驚かせましたが、因縁の相手を下して、日本人で初めて世界ベルト4本の防衛に成功。試合直後は「映像を見返してから」と先送りしていた試合について語った全文を【井上尚弥の言葉】で、余さず振り返ります。

巻末では、尚弥が強く意識してきた“世紀の大番狂わせ”――今も語り継がれる、その34年前となる東京ドームでの1990年2月11日=統一世界ヘビー級王者マイク・タイソン(米国)陥落の舞台裏、鉄人神話崩壊までを番記者がたどった大型連載を紹介します。

ボクシング

世界戦から一夜明けて会見した、左から井上拓、井上尚、武居(撮影・江口和貴)

世界戦から一夜明けて会見した、左から井上拓、井上尚、武居(撮影・江口和貴)

映像を見直して

-はじめに

井上尚弥 えー本日はお集まりいただき、ありがとうございます。昨日、無事にドーム決戦が終了しまして、一夜明け、まあ映像も見直したんですけども、もちろんその1ラウンドでのダウンも含め、まあ6ラウンド、しっかりと見たんですけども、内容的にも満足のいく内容というか、すごく良い試合だったなという感想を受けます。そして、陣営の方々はすごくヒヤヒヤしたと思うんですけど、ああいう試合は、昨日来ていただいた4万人のお客さん、全ての方が満足して帰っていただけたんじゃないかなと思うので、昨日は本当に自分自身、歴史に残る良い日になったと思います。ありがとうございました。

-ネリと対戦して感じたことは

尚弥 まあでも、全て想定内でしたね。はい。1つ挙げるとすれば、もっとパワーがあるのかなというものでしたね。ただ1ラウンド目のダウンというのは本当に自分の死角から入ってきたパンチで、見えなかったパンチなので、まあ1つ誤算があるとすれば、そこの角度調整のミスというか、はい、そこだけですかね。

-ネリが今まで対戦してきた相手で一番強かったか

尚弥 そうですね。やりやすさ、やりにくさとか踏まえても、まあ一番手強いとは言えないのかなと。まあやっぱり、戦う前から、隙がすごい多い印象だったので、その通りのイメージでしたね。

世界戦から一夜明けて。左から井上真トレーナー、井上拓、井上尚、大橋会長、武居、八重樫トレーナー

世界戦から一夜明けて。左から井上真トレーナー、井上拓、井上尚、大橋会長、武居、八重樫トレーナー

6回、ネリにTKO勝ちした井上尚はコーナに登って雄たけびを上げる

6回、ネリにTKO勝ちした井上尚はコーナに登って雄たけびを上げる

-昨日、珍しく興奮している様子だったが、あのような精神状態は今までにない感覚か

尚弥 東京ドームでの試合というのもあるし、初のダウンもありましたし、そのダウンが別に悔しいとかどうとかではなく、その出来事自体が自分をハイテンションにさせたと思います。

-実際に映像を見て「こんな試合だったのか」みたいな驚きはあったか

尚弥 1ラウンド目が終わったインターバルですごく冷静だったので、上のモニターを見て、どのパンチをもらってどういうダウンをしたのかしっかり見ていたので、次のラウンドへ出る前にインプットされたまし。

-ハイテンションになれたのは「ダウンも含めて」ということか

尚弥 それもありますし、やっぱりあの注目度の中、東京ドームで試合っていうのがすごく大きかったですね。

5回、ネリからダウンを奪う井上尚

5回、ネリからダウンを奪う井上尚

6回、ルイス・ネリにTKO勝ちした井上尚

6回、ルイス・ネリにTKO勝ちした井上尚

-4ラウンド、ネリ選手のまねをしたように見えたが

尚弥 L字ガード自体はそんなに珍しくないですよ。

-試合の入り方について

尚弥 硬さがあって、気負いもあった。あのダウンでしっかりと本来のボクシングを、まずはネリを勢いづかせないための作戦だったんですけど、それも含め、やっぱりその大舞台というのも自分自身、テンションが上がりました。

-作戦というのは最初から強めのパンチを

尚弥 そうですね。

6回、ネリ(後方)からダウンを奪ってガッツポーズの井上尚

6回、ネリ(後方)からダウンを奪ってガッツポーズの井上尚

-決着の場面について手応えはあったのか

尚弥 手応えはありましたよ。アッパーからのストレートとフックの中間というか、一番力の乗るパンチで。

-コンパクトなパンチに見えたが、あれは得意なパンチなのか

尚弥 得意不得意ではなく、ネリの位置に合わせにいくっていう。

-ダウン時のイメージトレーニングについて

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