ロサンゼルス(LA)ダウンタウンの再開発は、2000年代に執行された老朽化したオフィスビルや住宅を再開発する条例によって加速。高級ホテルや高層コンドミニアムの建設ラッシュとなり、2007年にはNBAレイカーズとクリッパーズ、NHLキングスの本拠地「クリプトドットコム・アリーナ(旧ステープルズ・センター)」一帯の再開発で、複合エンターテインメント施設「L.A.ライブ」が誕生しました。

廃墟と化した建物の向かいにある巨大複合施設L.A
廃墟と化した建物の向かいにある巨大複合施設L.A

治安が悪く、夜間は歩けない街だった一帯に、レストランやホテル、劇場、ライブハウスなどが集まり、グラミー博物館もできたことで観光名所へと変貌。活性化によってL.A.ライブを眼下に見下ろすダウンタウンの眺望がすばらしい高層コンドミニアムも乱立し、ダウンタウンは働く街から、遊ぶ街、そして住む街へと変化してきました。

そんなL.A.ライブ周辺では、建設途中のまま放置されてしまった高層ビルがあり、社会問題となっています。クリプトドットコム・アリーナの目の前という立地に10億ドルを投じて15年に建設が始まった3棟からなる超高層コンドミニアムは、2020年の完成を目指していたものの19年に開発業者の財政難から工事が停止。そのまま放置され、コロナ禍で廃墟となった建物に不法侵入者が相次ぐ事態となり、窓は落書きで覆われています。

建設途中のまま放置されて5年になる高層ビル
建設途中のまま放置されて5年になる高層ビル
窓は落書きで覆われています
窓は落書きで覆われています

40階建て以上のコンドミニアムとホテルになるはずだった建物は27階ほどで廃墟と化し、今年に入ってからも、柵を乗り越えて不法侵入した若者が逮捕されるなど混乱が続いています。警察は開発業者に現状改善を求めるも、中国に拠点を置く業者とは連絡がつかない状態であると伝えられています。ネットにはドローンで落書きを撮影した映像も投稿されており、事故につながる可能性もあって危険なため、現在も警察によるパトロールや監視が続いています。

今年2月にL.A.ライブでグラミー賞授賞式が開催されたことで、このオーシャンワイド・プラザと呼ばれる高層ビルに注目が集まりましたが、それから3カ月が経過した今も事態は変わっていないようで、筆者が先日訪れた際も金網の柵が設置された建物の前にはパトカー2台が停車し、警備をしていました。

柵はあるものの、簡単に中に侵入できてしまうため不法侵入が度々報告されています-
柵はあるものの、簡単に中に侵入できてしまうため不法侵入が度々報告されています-

周囲の景観を損ねているのはもちろん、コンクリートがむき出しになった建物への侵入は危険なため、市も対応に迫られています。LA市警察は対策措置を実行し、落書きを除去するとX(旧ツイッター)で述べていましたが、落書きを除去する費用の捻出など問題も山積みで、現在もそのままの状態で放置されているようです。取り壊すにも、誰が責任を持つのか、費用はどうするのか不明で、負の遺産を抱えて市も頭を悩ませています。(米ロサンゼルスから千歳香奈子。ニッカンスポーツ・コム「ラララ西海岸」、写真も)