DeNAの高卒2年目、松尾汐恩捕手(19=大阪桐蔭)の動きに注目した。この試合では、二塁への送球に改善点が感じられた。

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試合ではイニング間にバッテリーは投球練習をする。5球の中で、真っすぐの感触や、変化球の曲がり具合をチェックする大切な時間だ。そして、それは投手に限ったことではない。

捕手は最後の投球練習時に二塁に送球する。盗塁を刺すためのチェックとして、捕球から送球動作までの動きのチェック、そして正確に二塁に投げる確認をする。その動きを相手ベンチは見ている。

私は1回裏の攻撃が始まる前から、ずっと松尾のセカンドスローに着目していた。どういうボールを投げるのだろうと。プロ2年目で、投げるまでの速さ、正確に投げているか、ボールの強さは出ているか、そういうところをじっくり見ていた。

初回から8回まで、松尾のイニング間の練習で、セカンドスローが良かった場面は1度もなかった。ほとんどベース手前で失速してワンバウンドになっていた。松尾の強肩からすれば、原因はボールをしっかり握っていないことが考えられた。

6回だと思うが、自分の間合いで送球していたが、ただ自分のタイミングで投げているだけで、ボールに強さは出ていなかった。ボールをしっかり握れていないことへの反省があれば、きっちり握り、正確で強いボールを投げられたはずだ。

松尾のスローイングから受けた印象は、ただただ速く、ということだった。速く投げることはいい。それを踏まえて正確なボールでなければ、盗塁は刺せない。速くを意識するあまり、横から投げたり、ワンバウンドを投げたり、その繰り返しでは、実戦を想定したイニング間の練習としては意味がない。

先発は松尾と同期の高卒2年目左腕の森下だった。松尾は森下にいいタイミングで声をかけ、リズム良く5回まで2安打とうまくリードしていた。ヒットも放ち、捕手としての能力の高さは感じられた。そうした良さが見ていてよく分かるだけに、私の目には雑に映るセカンドスローがとても気になった。

6回、森下が一塁への暴投などで1点差に迫られ2死一塁と同点の走者を置いた場面で、盗塁を許した。その時の送球は、イニング間の送球とまったく同じで二塁ベース手前で失速したワンバウンドだった。

イニング間にしっかり修正していたら、と思わずにはいられなかった。松尾はワンバウンド送球をすると、首をかしげながら指先を見ていた。指先は関係ない。松尾の意識の問題だろうと感じた。早く、1日でも早く、こうした部分に自分で気づいて目を向けなければ、同じことを繰り返さないとも限らない。

冒頭で触れたように、イニング間の捕手のセカンドスローを、相手ベンチは見ている。指にしっかりボールがかからない送球を繰り返していた姿を、もれなく日本ハムベンチは参考にしていたはずだ。これは2軍も1軍も変わらない。それこそ、アマチュアでも同じ構図のはずだ。

正確に強いボールを投げる。そこに捕球から送球への動作を無駄なく、スピーディーにすることで、完成度の高いセカンドスローとなる。それを見せられた時、相手ベンチはたやすく走れないと感じ、それが抑止力となり盗塁への意欲をそがれる。

それが盗塁企図数の減少につながれば、捕手にとってもプラスとなり、バッテリーとしても見えない大きな武器になる。戦いはイニング間の練習から始まっている。松尾にはその意識を高め、本来持っている捕手としての総合力、打力をいかんなく発揮する捕手に成長してほしい。(日刊スポーツ評論家)

DeNA松尾(手前)(2023年2月21日撮影)
DeNA松尾(手前)(2023年2月21日撮影)