甲子園の記者席からグラウンドを眺めていて、妙な違和感があった。救援投手をブルペンからマウンドまで運ぶ「リリーフカー」の運転手が、今年から男性に変わっている。

右中間、左中間の「ラッキーゾーン」にブルペンがあった時代にカート型に変わり、一般公募の女性が長年、運転役を担ってきた。14年に球団オフィシャルファンサービスメンバー「タイガースガールズ」が結成されると、運転は彼女らの仕事になった。

再考のきっかけは昨年。タイガースガールズが結成10年目のシーズンを終えた。彼女らの“本業”はダンスパフォーマンスとファンサービス業務全般。グラウンドで見せるダンス以外にも、イベント出演や補助、施設訪問、学校訪問など仕事は多岐にわたる。ファンサービス事業は年々拡充している。10年の区切りを機に、リリーフカー運転と球審へのボール渡しを、切り離すことが決まった。

新たに運転手などを管理することになった業務委託先は、男女問わずに募集をかけた。集まったメンバーの中で業務を振り分けた。暫定的に、リリーフカー運転手は男性とすることにした。球団に対して、男性でも問題ないかの確認をして、OKをもらった。今のところ、ファンからの反対意見はないという。

現在、リリーフカーを使用しているのは甲子園と横浜スタジアム、ZOZOマリン、エスコンフィールドの4球場だけ。いずれもブルペンとマウンドが遠い。旧広島市民球場では無線で動く無人カーが名物だった。マツダスタジアムはベンチの裏にブルペンを作ったため、必要なくなった。

思い思いの曲をバックに、車で颯爽(さっそう)と登場するなんて演出ができるのは野球だけ。エンタメとしても個性がある。後楽園球場の白球をかたどった小型カーに胸を躍らせた私からすれば、いつまでも続いてほしい演出だ。

近年、高校野球でも女性監督、ノッカーなど女性の活躍の場が次々と広がっている。逆に、これまで女性に限られていた仕事が男性に移るのも自然なこと。ボーダーレスが進めば、また新しい魅力創出につながっていくかもしれない。【阪神担当=柏原誠】

阪神対オリックス 8回表オリックス2死一、三塁、8回途中から登板する湯浅(2023年11月撮影)
阪神対オリックス 8回表オリックス2死一、三塁、8回途中から登板する湯浅(2023年11月撮影)