現役時代は近鉄一筋17年で4度の盗塁王に輝き、オリックスで監督を務めた日刊スポーツ評論家の大石大二郎氏(65)が試合をチェック。

阪神は先発西勇が好投しながら走塁で喫した3つのアウトも響き、ミスした方が負ける展開と指摘した。【聞き手=松井清員】


競った試合はミスをした方が負ける。阪神的にはそんな展開になってしまった。5回はヒットで出た近本がけん制で、10回は代走の植田が盗塁でともに刺された。近本は菅野が投球動作に入る前にスタートを切っていたし、植田もバルドナードが少し動いたらスタートしていた。クセを研究しての裏付けがあるのかもしれないが、結果が失敗に終わると走塁ミスと言わざるを得ない。10回には木浪の走塁死もあった。遊直の場合、二塁走者が飛び出してしまう場面はあるが、一塁走者がアウトになるケースは珍しい。投手戦でチャンスが少なかっだけに、走塁面で喫した3アウトは痛かった。

失点にはつながらなかったが守備のミスもあった。同点に追いつかれた直後の8回、佐々木の捕前バントで一塁カバーがおらず、悪送球でピンチが広がった。本来はセカンドの中野が入るべきケース。岩崎が踏ん張り勝ち越しは許さなかったが、ボーンヘッドとして反省しないといけない。試合は岩崎や島本らが打たれて競り負けたが、ここまでほぼ完璧だったリリーフ陣を責めることはできない。彼らの頑張りのおかげで、今首位に立てているのだ。

接戦を演出した西勇の投球はたたえたい。巨人打線は4番岡本和と5番坂本をどう抑えるかがポイント。特に岡本和の初回の第1打席が肝で、1-1から3球連続内角へのシュートで攻めた。2死二塁の得点圏、先制点をあげたくない場面で見せた配球は「シュートで来るぞ」と強烈に残る。結果シュート待ちの岡本和は、スライダーで空を切らされた。次打者席にいた坂本も内角を意識させられたはず。だが西勇はその後、2人に対してほぼ外角一辺倒。完全に惑わせ、ともに2打席連続三振に斬った。相手も対策してくる3打席目は、2人に一度も見せていなかったチェンジアップを軸に凡飛に仕留めた。これだけの投球をして勝ちがつかないのは残念だろうが、坂本のリードも含めたクレバー投球は見事だった。(日刊スポーツ評論家)

巨人対阪神 10回表阪神無死一塁、代走植田(左)は二塁盗塁に失敗する(撮影・足立雅史)
巨人対阪神 10回表阪神無死一塁、代走植田(左)は二塁盗塁に失敗する(撮影・足立雅史)
巨人対阪神 10回表阪神1死一塁、近本の遊直に一塁を飛び出していた木浪(下)はアウトとなる。一塁手岡本和(撮影・足立雅史)
巨人対阪神 10回表阪神1死一塁、近本の遊直に一塁を飛び出していた木浪(下)はアウトとなる。一塁手岡本和(撮影・足立雅史)